今流行り(?)のジェイソン・ボーンではない。クリスタル湖で若者を殺しまくるホッケーマスクの殺人鬼、ご存知「13日の金曜日」のジェイソン・ボーヒーズである。
昔は「13日の金曜日」のようなB級スプラッターがよくTVで放映されていた(今もされているのだろうか、よく知らないが)が、僕は小さい頃なぜかジェイソンは”正義の味方”だと思っていた。
あの特徴的なホッケーマスクが往年の戦隊ヒーロー物を連想させたのだろうか。
理由はよく分からないが、とにかく少年時代の僕にとって「何とかレンジャー」と殺人鬼ジェイソンは同等の存在だったわけだ。
なぜそう思ったか、それを検証しようという意味もあって、最近「13金」シリーズを1作目から改めて見直してみた。そして先日 “13日の金曜日 完結編” を見終わってこれを書くに至る。完結編といってもシリーズ10作品中の4作目にあたり、まだ途中ではあるのだが。
まずこのシリーズ、非常に退屈なシーンが多い。
毎回「クリスタル湖」という湖におとずれた若者のグループがジェイソン(1作目はジェイソンのお母さん)に殺されていくわけだが、前半は湖のほとりのコテージに泊まりにきた若者が、楽しそうに遊ぶシーンが続く。それも、マリファナを吸ったり、セックスをしたり、堕落した若者といった感じで、それでいてそれぞれのキャラが大して立っているわけでもないので、彼らに感情移入は出来そうもない。
誰かがジェイソンに殺されても、それが誰だったかも思い出せないので、「ああ、あいつが死んじゃった」という気持ちになれない。
ただ一人の若者が殺された、というだけだ。
つまりこういうことだ。
ショッカーの戦闘員に感情移入する人はまずいないだろう。彼らの立場で見たら、仮面ライダーは恐ろしい殺人鬼であるかもしれない。
しかしそういう見方をするためには、ショッカーの戦闘員を”応援”しなければいけない。
僕は裸で湖を泳ぐ男女よりも、ジェイソンを応援していたに違いない。
なぜなら、殺される若者達よりもジェイソンの方がはるかに人間らしいキャラクターを持っているからである。
まず、彼はマザコンである。
1作目で、殺そうとした若者に返り討ちにあって死んでしまった母親の首を、2作目ではジェイソンが祭壇の様な場所に祭っている。
それをみた若者の一人が、そこにあった服を着て母親に成りすまし、ジェイソンをなだめようとするのだが、「ジェイソン、ママよ」といわれておとなしくなるジェイソンは、もはや”かわいい”としか言いようがない。(2作目のジェイソンはホッケーマスクではなく目のところに穴を開けた袋をかぶっており、全体的にどこかコミカルで可笑しい。)
そしてさらに凶暴になって若者を殺しまくる4作目では、あろうことか小さな少年の変装により、2作目と同じ手にかかって殺されてしまうのだ!このマザコン野郎!
そして、幼くして湖でおぼれ、異形の怪人となってしまったジェイソンが湖で楽しそうに遊ぶ若者達をうらやんでいたのではないかと僕は感じたのだが、そういう見方をすると、もうどうしても彼の方を応援してしまうわけだ。
さらにシリーズ最新作まで全作品を見終えたら、改めて続きを書くかもしれない。書かないかも。