リバティーアンドジャスティス

23年間昏睡状態であった男性「ずっと意識があった」 | IBTimes(アイビータイムズ)
「ジョニーは戦場へ行った」という小説がある。
戦場で負傷し、目、鼻、口、耳を失い、両腕両脚を切断された青年のお話である。第2次世界大戦が勃発した1939年に発表された所謂「反戦小説」である。
戦争反対。戦争というのはこんなに悲しく、愚かな事であるからやめなさいという訳だけれども、著者が戦争の愚かさを伝えるためにとった手法が恐ろしい。即ち、全編が主人公ジョーの意識と回想によって語られるのである。
つまり読者は外界との接点をことごとく奪われた永遠の闇をジョーとともに彷徨う事を強いられることになり、それは僕に夜中にお手洗いに行けなくなる類いの物とは違う、もっと根源的な恐怖を与えたのである。
例えば僕は「死」が怖い。死んだ後のことは、極楽浄土、輪廻転生、墓場で運動会といった概念を除き、少なくとも僕には微塵ばかりも想像ができない。だって自分が終わった後なんだから。想像は出来ず、しかし必ず訪れるというところに漠然とした恐怖がある。一方、ジョーの無限地獄が与えるものは、きわめて死に近いところにありながら、想像可能な恐怖であった。
はじめてこの本を読んだとき(著者自身が監督した映画版の方を先に見たが、ジョーの周囲の様子が映像で表れるという点で趣が違う)僕は恐ろしさのあまり一人で発声練習をしたり部屋の片隅を這う謎の虫を愛でたりしていたが、まさか、23年間もほぼ同じ状況の人が実在したとは。
目や耳は機能していたのだろうか、詳しい事は分からないが、まさに無限地獄だったろうと思う。


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